元統治体員による内部告発の書『良心の危機』のご紹介

『良心の危機−「エホバの証人」組織中枢での葛藤』
レイモンド・フランズ著
樋口久 訳
せせらぎ出版
ISBN:4884161025
(2000/12)
A5判 492ページ 税込\3,990

内容:
◆「エホバの証人」の中枢幹部だった著者の冷静かつ仮借のない内部告発の書。英語原書は大反響を呼び、現在世界9カ国語に翻訳。ついに待望の日本語訳完成。
◆「エホバの証人」として知られている宗教団体内部での記録。宗教団体内部でいかに物事が決定され、それがいかに全エホバの証人の生活に影響するかを、なまなましく、ありのままに語る。

翻訳者 樋口久氏によるレビュー
いろいろな読み方ができる、興味深い本。レイモンド・フランズ氏は、「エホバの証人」組織内部に数十年を過ごし、その最高幹部の一員として活躍し、そして辞めた人物です。そしてこの本を書きました。こういう本は、めったにありません。

エホバの証人組織というのは、世界にざっと500万人、日本でざっと20万人の成員を有する、ちょっとした大組織です。(もちろん、ものすごいお金も動いています。実際のところ、なかなかの優良企業なのです。)自ら知りつくしたその組織について、内部の文献や実際の出来事に基づいて、淡々と語ります。

エホバの証人の教義はどのようにして作られるのか。聖書を信じるとはどういうことなのか。組織(の上層部)はなぜ腐敗するのか。そもそも信仰とは何なのか。― いろいろなことを問いかける本です。エホバの証人の皆さんや家族にエホバの証人がおられる人はもちろん、クリスチャンにとっても、一般の人々にとっても、参考になる内容です。

本書の構成は、次の通り:
序論
(第1章);エホバの証人組織内部での生活を回想する部分
(第2-6章);特に年代予言に関する教義の成立を詳述する部分
(第7-10章);組織をやめた前後経緯の回想
(第11-12章);その後の心境
(第13章)

聖書やキリスト教になじみの薄い方は、やたらに聖書の引用などが出てくるので閉口なさるかもしれませんが、話の本質は十分に味わって頂けることと思います。

わが国では、宗教の話題は一種のタブーです。触りたくない式の心理がまだまだ広く見られます。そんな風潮の中でこそ、「宗教はコワイ」式の安っぽい通念を越え、実感に基づく当たり前の感覚を取り戻すのが重要でしょう。本書は、人間の怖さ、団体の恐ろしさを描きつつ、またそれに気づくことのできる人間精神の健康さ、魂のしなやかさを表現した、稀有な記録です。


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